リスニング〜英語が聞き取れない原因を分析して、弱点をあぶり出す!

ペンを持つ女性

英語コーチングの体験セッションをしていると、「リスニングが苦手なので何とかしたい」というお悩みをよく耳にします。

リスニング力を上げるためには、単なる聞き流しではだめで、多聴(大まかな内容をつかむ聞き方)と精聴(聞き取れなかった細かい点もすべて理解するための聞き方)をバランス良く組み合わせた方法が効果的です。(詳しくはこちらをどうぞ→「聞き流し」は効果なし!? 英語がスイスイ頭に入る「2つの聞き方」とは?

そして、細かい点まで聞き取る力をつけるためには、ディクテーション(聞こえた英語を1文字1文字書き取るトレーニング)が有効であり、さらに聞き取れなかった箇所について「なぜ聞き取れなかったのか?」その原因を分析することがとても重要です。(詳しくはこちらをどうぞ→リスニングの壁を突き破る!挫折しないディクテーションのやり方

この記事では、まず「英語が聞き取れない5つの理由」をご紹介し、その中でも特に「英語の音声変化」が原因で聞き取れないケースに焦点を当てます。聞き取れなかった原因を分析することで、自分のリスニングの弱点をあぶり出すことができるのです。

1. 英語が聞き取れない5つの理由

チェックマーク

英語を聞いても何を言っているのかわからない、何回聞いても聞き取れない・・・と漠然と悩んでいるだけでは、いつまでたってもリスニング力は上がりません。「なぜ聞き取れなかったのか?」その原因を分析し、弱点を補強していくことが必要です。

では、英語の聞き取りを妨げている原因には、どのようなものがあるのでしょうか?

1-1. 語彙力が足りない

知らない単語の数がそれほど多くなければ、聞き取れなかったところは前後関係からある程度推測して大意をつかむことができます。ところが知らない単語があまりにも多すぎると、わかったところだけをつなぎ合わせても理解度は虫食い状態。これでは大意をつかむどころか、何の話をしているのか理解することさえ難しいですね。

こんな状態でリスニングを続けるのは、苦行でしかありません。もっと自分のレベルに合ったリスニング教材を選ぶと同時に、語彙力アップに努めなければなりません。

例えば、TOEICのリスニングセクションの点数を上げたい場合。ただ闇雲にリスニング問題を聞きまくるやり方は効率的ではありません。まず、TOEICによく出る単語をマスターしてから、リスニング問題を解いてみましょう。知っている単語が増えたことで、聞き取り力が大幅にアップしているのが実感できるはずです。

1-2. 文法力が足りない

単語はわかるけど、文になると聞き取れなくなる・・・という人は、英語の構造や文法がきちんと身についていない可能性が高いです。このような場合、簡単な内容であれば、知っている単語をつなぎ合わせて何とか話の流れについていくことはできますが、ちょっと複雑な文になるとお手上げです。

また文法知識は、聞き逃した英語の音を推測する手助けをしてくれることもあります。つまり、たとえ一部の音を聞き逃したとしても、文法知識で内容理解を補うことができる場合があるということです。

これがリスニング力を上げるための隠れたヒント=リスニングにおける予測の役割です。例えば、I know (   ) you meanという英語を聞いて、(   )の音が聞き取れなかったとしても、文法知識があれば瞬時にI know what you meanと頭の中で推測して理解することができます。

1-3. スピードについていかれない

リーディングは自分のペースでゆっくり読めるからいいけど、リスニングはとにかくスピードについていくのが大変・・・といった声をよく聞きます。これは、聞こえた英語を日本語に置き換えて理解しようとする場合に起こりがちです。いちいち日本語に置き換えていては、とてもじゃないけれど英語のスピードについていかれるはずがありません。

つまり、英語のスピードについていくためには、「英語を英語の語順のまま理解する力」が必要になります。簡単な例をあげると、I went to the park yesterdayを「私は/行きました/公園に/昨日」のように、英語の音が耳に入っている流れに乗ってスムーズに内容をイメージできれば、英語のスピードから乗り遅れることはありません。

この「英語を英語の語順のまま理解する力」をつけるには、音読トレーニングがおすすめです。(詳しくはこちらをどうぞ→英語音読の効果とは?正しい5つの手順+レベル別おすすめ教材10

1-4. 知ってる単語なのに、聞いてもわからない

英語の音声を聞いたときには何を言っているのかまったくわからなかったのに、スクリプトを見た途端に「な〜んだ、こんなこと言ってたんだ」と思ったことはありませんか?つまり、読めばわかるのに、聞くとわからない・・・という状態です。

以前、ある知り合いからこんな質問を受けたことがあります。英会話スクールのネイティブ講師に”Thank you!” と言ったら、「ナラロー」と言われたと。これ何の意味だかわかりますか?そう、Not at allです。「ありがとう」に対して「どういたしまして」と答えてくれたのですが、Notとatとallが全部つながって「ナラロー」と聞こえたらしいのです。

Notもatもallもすべて簡単な単語ですよね。それが隣同士の音がくっついて「ナラロー」というひとつの単語に聞こえてしまったので、理解できなかったのです。これが「英語の音の特徴」の1つ。こういった英語の音の特徴に慣れていないと、本当は知っている単語も聞き取ることができなくなってしまうのですね。

この点については、記事の後半で詳しく取り上げます。

1-5. そもそも英語に聞こえない

これは、「1-4. 知ってる単語なのに、聞いてもわからない」でお話ししたことに通じるところがあります。つまり、人間の脳は知らない音を聞いたとき、自分の知っている音に置き換えて認識してしまう傾向があるのです。
その良い例がこちら。

知らない言語なのに、全部日本語に聞こえるのは本当に不思議ですよね。私たちの脳が、勝手に知らない音を日本語の音として認識している証拠です。
この問題も、「英語の音の特徴」を知ることによって少しずつ解決していくことができます。単語レベルだけでなく、文レベルで発生する英語の音の変化を意識すれば、聞き取り力も大きくアップします。

2. 英語の音の特徴:3つの変化を見破って、リスニング力を鍛える

音楽

これまで、英語が聞き取れない5つの理由をみてきました。ここでは、特に「1-4. 知ってる単語なのに、聞いてもわからない」、「1-5. そもそも英語に聞こえない」という、「英語の音の特徴」にかかわる問題にスポットを当て、リスニング力を鍛えるヒントを探ります。

2-1. 「弱く発音される音」を逃さない

英語の音には強弱のリズムがあります。ということは、弱く発音されるところはどうしても聞き取りにくくなってしまいます。では、どんな音が弱く発音されるのでしょうか?

文の中であまり重要な意味を持たない単語が弱く発音されます(強調される場合は除く)。

例えば・・・

【be動詞/助動詞】is, am, are, was, were, do, does, did, would, can, will…などたくさんありますね。

  • Where do you live?
  • John and Mary are here.
  • I was quite interested.
  • They were bored.
  • She said she would be here.

上の文の下線部の音は、弱く発音されています。(音声はこちらから)

よく耳をそばだて、Exampleの各文の前にある

オンボタンを押して確認してみてください。

最初は聞き取れなくても、だんだんと耳が慣れてきます。まずは「弱く発音される音がある」ということを知るだけでも、大きな進歩です。

【前置詞】to, for, from, into, of, about, at, in, on…といった前置詞も弱く発音されます。

  • I went to the market.
  • Wait for me!
  • She’s from York.
  • Put it into the box.

今度はこちらの音声を聞いてみてください。下線部の前置詞は聞き取れましたか?こういう音の変化に慣れてくると、たとえその音全体がはっきり耳に入ってこなくても、文の意味がイメージできるようになります。

【その他】and, but…などの接続詞、a, an, theなどの冠詞、you, your, my, me, he, his, him, she, her, our, us, it, they, their…などの代名詞も弱く発音されます。

  • Rock ‘n'(and) roll.
  • but one of the main points…
  • It’s faster than mine.
  • The dog that bit me…
  • Where do you live?

こちらの音声を聞いて、文の中で「弱く発音される音」の存在を実感してみてください。

以上の例のような「弱く発音される音」を逃さない!・・・そんな意気込みで英語の耳を育てていきましょう。

2-2. 「つながった音」を見極める

ゆっくり話される英語は聞き取れるけど、ナチュラルスピードになるとついていかれなくなる・・・そんな経験はありませんか?

それは、自然に話される英語では、隣同士の音がつながって1つになるという特徴があるからです。先ほど例にあげたNot at allという3語が「ナラロー」と1つの単語に聞こえてしまったのもそのためですね。「読めばわかるけど、聞いてもわからない」の原因でもあるわけです。

では、どういう場合に隣同士の音がつながってしまうのかみてみましょう。

まず簡単なものからいくと、いわゆる短縮形では隣同士の音がつながって聞こえます。I willがI’ll、I wouldがI’dのように短縮されると、それに伴って(無理やりカタカナ読みにしてみると)「アイ・ウィル」ではなく「アイル」、「アイ・ウドウ」ではなく「アイドウ」と連結されます。

もう少しレベルを上げて、should haveがshould’veとなったときのhaveや、should not haveがshouldn’t haveになったときのnotやhaveを見極められるようになったら怖いものなしです。

次に、ひと昔前に結構耳にした「チェキラ」に聞き覚えのある人もいらっしゃると思います。英語で書くとCheck it outですね。「チェックしてみてね」という意味で使われていました。実はこれも、英語の音声変化の1つなのです。子音の後に母音が来るとつながって1つの音に聞こえる現象です。

Checkのk(子音)とitのi(母音)、itのt(子音)とoutのo(母音)がそれぞれつながって、それが素早く一気に発音されると「チェキラ」と聞こえるのです。

また、help youとかmeet youのように後ろにyouが来ると、「へルプ・ユー」ではなく「へルピュ」、「ミート・ユー」ではなく「ミーチュ」のようにつながって1つの音に聞こえます。よく小さな子どもがケンカ相手に「お前なんかキライだ〜」と感情むき出しに叫ぶ、I hate youの「ヘイチュー」もこの例ですね。

going toをgonna(ガナ)、want toをwanna(ワナ)とつなげて発音する人も多いですよね。have toも早口になると「ハフタ」とつながって聞こえることは日常茶飯事です。

以上は、どれも読めば簡単な単語ばかり。知っているのに聞き取れないのは、英語の音声変化に惑わされているのが原因です。

2-3. 「消えた音」を意識する

話すスピードが速いと、弱く発音されるどころか、文字で書いてあっても実際には発音されない場合があります。これはかなり厄介ですよね。そもそも発音されていない音は聞こえないわけですから。とはいえ、それであきらめては元も子もないので、ここでは2つの現象をご紹介します。

まず1つめは、子音と子音が重なると、前の子音が聞こえなくなる・・・という例です。

get downのtや、sit downのt、get togetherのtは、それぞれ次に来る子音に飲み込まれて聞こえません。これは単なるルールというよりも、その方が発音しやすいからです。舌が同じ位置にあるなら、いちいち別々に音を出すよりも1回だけ発音しておけばいいや〜という省エネ志向です。

最初の子音を発音しないといっても、よく耳をすませてみると、ge_ down、si_ down、ge_ togetherの空白部分_に一瞬息を飲むような「間」があります。これに気づくことができるようになれば、かなり耳が英語の音に慣れてきた証拠です。

2つめの例は、Good jobの下線部のbのように、最後に来る子音が脱落する場合です。無理やりカタカナで表すと、「ジョブ」ではなく「ジョ_」とbの音は飲み込まれる感じですね。

これ以外にも細かくみていくと、まだまだたくさんの音声変化の例があります。まずは、研ぎ澄まされたリスニング力をつけるための第一歩として、上にあげた3つの音声変化を意識することから始めてみましょう。

3. 自分のリスニングの弱点を分析する〜まずはディクテーションから

疑問

リスニング力を上げるには、「いつかは聞こえるようになるだろう〜」とただ闇雲に英語を聞き続けるだけでは効率的とはいえません。「なぜ聞き取れなかったのか?」その原因がわからなければ、いつまでたってもわからないものはわからないまま、聞き取れないものは聞き取れないままです。

効率よくリスニング力を上げるには、まず自分のリスニングの弱点を分析してみることです。その手取り早い方法がディクテーション。やってみたことがある方ならおわかりだと思いますが、手取り早いというのは、簡単とか楽とかいう意味ではありません。むしろ、かなり大変です。

とはいえ、聞こえた英語を1文字1文字書き取るわけですから、自分のリスニングの弱点をつかむ上でこれほどわかりやすい方法はありません。書き取れなかった音が聞き取れなかった音なので、その部分に焦点を当てると、なぜ聞き取れなかったのか?その原因=自分の弱点が浮き彫りになるからです。

なんだか大変そうだけど、ディクテーションで自分のリスニングの弱点を分析してみよう・・・と思った方は、こちらの記事で挫折しないディクテーションのやり方を確認してから、この記事の「1. 英語が聞き取れない5つの理由」と「2. 英語の音の特徴:3つの変化を見破って、リスニング力を鍛える」を参考にして、ぜひ自分の弱点を突き止めてみてください。

さて、英語学習にも気分転換が必要です。大変なトレーニングを「大変だ〜」と思いながらやるよりも、たまには「楽しさ」を優先した教材を取り入れるのも続けるための秘訣です。

今回は、洋楽を題材にした「穴埋めディクテーション」をご紹介します。歌には感情が込められているので、「英語の音の特徴」がつかみやすいかもしれません。また、ディクテーションを終えた後に、自分自身の感情を込めて歌うことで、英語のリズムや発音が自然に身についてくるはずです。

Learn English With Songs

上のサイトにはいろいろな歌があるので、今回の記事でご紹介した「英語の音の特徴」を意識しながら、ご自分のレベルと好みに合わせて選んでみてください。カラオケで気持ちよ〜く歌えるようになることを目標に!

ジョンレノン

イマジン

動画で歌を聞きながら、穴埋めディクテーションをしていきます。全部正解すれば、歌詞カードの完成です。何度も繰り返し聞いて、「弱く発音される音」「つながった音」「消えた音」を探してみてくださいね。

4. まとめ

いかがでしたでしょうか?「リスニングの壁に直面している」「毎日英語を聞いているのに、なぜかリスニング力が上がらない」「TOEICや英検など英語資格試験のリスニングの点数を上げたい」という方は、以下のポイントを参考にして、ご自分のリスニングの弱点克服に役立ててみてください。

  • 弱点の分析:ディクテーションで、自分のリスニングの弱点をあぶり出す
  • リスニングの弱点①:語彙力が足りない
  • リスニングの弱点②:文法力が足りない
  • リスニングの弱点③:スピードについていかれない
  • リスニングの弱点④:英語の音声変化に惑わされている
  • 対策:英語の音声変化=「弱く発音される音」「つながった音」「消えた音」を意識して聞く

英検のリスニング問題が聞き取れない、TOEICのリスニングセクションの点数が上がらない、英語会議についていかれない、英語で話しかけられても聞き取れないので話が続きかない・・・リスニングの悩みは深刻になりがちです。そんなときはぜひ気分を変えて、英語の「音」を楽しむことから始めましょう。

歌で歌われている英語も「音」、TOEICのリスニング問題で流れる英語も「音」。日本語とはまったく違うリズムや音の流れを楽しむ余裕も、ときには必要ですね。